誤嚥性肺炎予防の薬物治療とは?
- 誤嚥性肺炎予防に有効とされる薬剤にはACE阻害薬(降圧薬)、シロスタゾール(抗血小板薬)、アマンタジン(パーキンソン病役・抗インフルエンザ薬)、ニセルゴリン(脳梗塞後遺症治療薬)、半夏厚朴湯(漢方)、葉酸などがあります。
誤嚥性肺炎予防の薬物治療の主な作用機序
- 薬物治療の作用機序しては、嚥下障害を直接改善するのではなく、嚥下反射や咳反射を改善する事によって誤嚥を防ぐという作用になります。
- 嚥下反射や咳反射を調節しているのがドパミンとサブスタンスPと呼ばれる神経伝達物質であり、この神経伝達物質が低下すると誤嚥性肺炎を起こしやすくなってしまいます。
- ドパミンやサブスタンスPが低下している患者に、上記の薬物を投与するとドパミンやサブスタンスPの分泌が促進され、誤嚥性肺炎の予防につながります。
誤嚥性肺炎予防に有効とされる薬剤一覧まとめ
- ACE阻害薬はサブスタンスPの分解酵素であるACEを阻害する事によりサブスタンスPの分解を抑制し、サブスタンスPの濃度を保ちます。また、ブラジキニンの不活性化を抑制し咳を誘発します(ACE阻害薬の誤嚥性肺炎予防に関するエビデンスのまとめはこちら)
- シロスタゾールは抗血小板作用及び脳血管拡張作用を有しており、脳血管障害患者の脳梗塞を予防する事により、大脳基底核のドパミン神経系の障害及びサブスタンスPの合成低下を防止します(シロスタゾールの誤嚥性肺炎予防に関するエビデンスのまとめはこちら)
- アマンタジンはドパミンの合成を促進し、サブスタンスPの合成能を高めます。
- ニセルゴリンはサブスタンスPを増加させて、嚥下反射や咳反射を改善します。
- 半夏厚朴湯はサブスタンスPを増加させて、嚥下反射や咳反射を改善します。
- 葉酸欠乏は誤嚥性肺炎のリスク因子とされ、葉酸欠乏患者において葉酸を補充すると嚥下機能が改善知ることが分かっています。
投薬上の注意
- 上記に挙げた薬物はそれぞれ誤嚥性肺炎予防以外の治療を目的として使用される事が多く(高血圧の治療、パーキンソン病の治療、脳梗塞の治療など)、使用する際には薬剤の効果とデメリット(副作用)をしっかりと判断する必要があります。
- 誤嚥性肺炎予防の目的で上記の薬剤の使用を希望する際には、かかりつけの主治医や薬剤師に相談する事をおすすめします。
参考文献
嚥下障害に対する薬物治療の現状と将来展望
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