サルコペニアによる嚥下障害の定義
- サルコペニアによる嚥下障害とは、全身のサルコペニアおよび嚥下に関連する筋肉減少によって引き起こされる嚥下障害として定義されます。身体の筋肉減少がない場や、脳卒中などの嚥下障害の原因疾患が明らかな症例も除外されます
- 嚥下に関連する筋肉減少によって嚥下筋力が低下し、嚥下筋力の低下は嚥下障害をもたらします
サルコペニアによる嚥下障害の診断基準(旧版)
- ※2019年 10月 24日、サルコペニア診断基準が改訂されました

- 65歳以上で以下の条件をみたすとサルコペニア性嚥下障害と診断されます
- 握力が男性で26㎏以下、女性で18㎏以下
- 歩行速度が0.8m/秒以下(横断歩道を時間内に渡り切れない程度)
- 筋肉量が男性で7.0㎏/㎡以下、女性で5.7㎏/㎡以下(DXA法、BIA法)
- 嚥下障害あり
- 嚥下障害の原因となる疾患(脳梗塞後遺症やパーキンソン病など)がない
- 舌圧が20kPa未満の嚥下筋力低下
- 最後の舌圧が測定できない場合や基準以上の場合をサルコペニア性嚥下障害疑い、舌圧の基準も満たす場合をほぼ(probable)サルコペニア性嚥下障害と診断する
サルコペニア診断基準2019

- 診療所や地域でのスクリーニングとしての評価基準
- 握力:男性<28㎏、女性18㎏
- 5回椅子上がりテスト>12秒
- 設備の整った医療機関や研究を目的とした評価
- 下腿周囲長:男性<34㎝、女性<33㎝
- SARC-F≧4、SARC-Calf≧11
- 握力:男性<28㎏、女性18㎏
- 5回椅子上がりテスト>12秒
- SPPB≦9
- 筋肉量が男性で7.0㎏/㎡以下、女性で5.7㎏/㎡以下(DXA法、BIA法)

- SARC-CalFは上記の5つの質問に加えて、下腿周囲長を計測することで(男性34㎝未満、女性33㎝未満の場合を10点、基準値以上を0点)、その合計点で評価します

サルコペニアによる嚥下障害の治療
- 嚥下リハビリテーションおよび栄養サポート
- とくに、嚥下筋の筋力トレーニングは他の要因によって引き起こされる嚥下障害よりも、サルコペニアによる嚥下障害を改善しやすい傾向があることが分かっています
参考文献
Sarcopenia and dysphagia: Position paper by four professional organizations.
Fujishima I,Geriatr Gerontol Int. 2019 Feb;19(2):91-97
Asian Working Group for Sarcopenia: 2019 Consensus Update on Sarcopenia Diagnosis and Treatment
J Am Med Dir Assoc. 2020 Mar;21(3):300-307
高齢者の栄養管理を考える
https://nutritionmatters.jp/common/pdf/disease/H191031MCP.pdf