超音波検査による嚥下機能評価
- 嚥下機能評価の検査法としては嚥下内視鏡検査(VE:videoendoscopic evaluation)や嚥下造影検査(VF:videofluoroscopic examination)検査が一般的ですが、最近では超音波検査(エコー検査)も使われるようになってきました。
- 嚥下障害における超音波検査の特徴について、文献紹介をしながら説明していきたいと思います。
文献紹介
Assessment of swallowing function and muscle using ultrasonography in general and family medicine
Wakabayashi,J Gen Fam Med. 2020 Mar; 21(2): 1–2.
- こちらの文献では超音波検査による嚥下機能評価の精度や特徴ついて解説されています。
嚥下機能評価における超音波検査の精度
- 嚥下機能評価において超音波検査がどのくらいの精度で嚥下機能障害を診断できるのでしょうか?以下に感度と特異度をまとめます。
- 「誤嚥」の検出感度は0.64、特異度は0.84
- 「梨状窩の咽頭残留」の検出感度は0.92、0.72
- 「喉頭蓋谷の咽頭残留」の検出感度は0.87、特異度は0.64
超音波検査の特徴
- 上で紹介した文献で超音波検査の特徴(得意な点・苦手な点)についてまとめられていますので(下図)、解説を含めながらご紹介します。

- 超音波検査の得意な点は大きく二つあり、声帯麻痺の診断と嚥下筋(筋肉量・筋肉の質)の評価が挙げられます。
- 特に嚥下筋の評価は従来のVEやVF検査ではなかなか難しく、今後高齢化社会に伴いサルコペニア(筋肉の減少が特徴)による嚥下障害が増えることを考えると、筋肉の評価ができる超音波検査はとても有用な検査と思われます。
- さらにVEやVF検査に無い特徴としては、医師以外の看護師や言語聴覚士などの医療従事者も使用できるという点です。今後超音波検査が普及すれば、院内や在宅で看護師や言語聴覚士によるさらに精度の高い嚥下評価が可能になります。
- 超音波検査の苦手な点は、咽頭/喉頭の感覚機能を評価することです。喉頭蓋や声帯などを描出することは可能ですが、その感覚機能を評価することは超音波では難しいようです。
- 上の表には記載がありませんが、超音波検査はVE・VFに比べると侵襲性(患者の負担)はかなり低いです。
まとめ
- 超音波検査による嚥下機能評価は誤嚥や咽頭残留などの異常を高い精度で診断し、非侵襲的、嚥下筋の評価を行える、医師以外の医療従事者も使用できる、という特徴があります。